母の日は、日本ではアメリカに倣って5月の第二日曜日と決まっています。プレゼントのカーネーションも制定者のアンナ・ジャービスが母の好きだった白いカーネーションを贈ったのをきっかけに、広まったとされています。
白いカーネーションから赤いカーネーションに代わった経緯やアンナ・ジャービスは人生の後半は「母の日」反対の活動に転じるなど、「母の日」についてはドラマに事欠きません。
ちなみにアンナ・ジャービスが育った、バージニア州西部グラフトンにある家はアンナ・ジャービス生家記念館として公開されています。
オカルトマニアには有名な場所で、超常現象のツアーまで行われています。この件については、またに別の機会に記事にまとめたいと思います。
ジョン・レノンのマザー
今回は、John Lennon の 「Mother」という楽曲について少し書き進めます。
BEATLES 解散から初のソロアルバムのオープニングナンバーとなった楽曲なのですが、「狂気じみている」という理由で、シングルカットされたにもかかわらず、アメリカでは発売禁止となってしまいます。詳しい経緯などは、Wikiのこちらを参照してみてください。
すごく短い歌詞で、ジョンらしくとても平易に書かれた歌詞なので、中学生でも、高校生なら余裕で和訳できるかと思います。
Mother の歌詞
Mother
Mother, you had me but I never had you
I wanted you, you didn’t want me
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbyeFather, you left me but I never left you
I needed you, you didn’t need me
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbyeChildren, don’t do what I have done
I couldn’t walk and I tried to run
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbyeMama, don’t go
Daddy, come home
最後の Mama, don’t go/Daddy, come home が延々繰り返されるので(10回)、アルバムタイトルにある「ジョンの魂」に触れたような気がします。
go to tell you の解釈
たくさんの方がもうすでに和訳したり、曲のレビューをしたりしているので、いまさらではあるのですが、どうしても「go to tell you」の解釈に納得がいかず、母の日にも関わらず、記事にしています。
『マザー』
おかあさん、
僕はあなたのものだったよね
でも
あなたは僕のものではなかった
僕はあなたに焦がれていたのに
あなたは僕を思ってくれなかった
だから、さよならをいうね
「さよなら」 「さよなら」
こんな風な和訳がとても多いのです。でも、I just told you にはなってませんよね。
got to tell は「伝えなきゃいけない」とか「教えてあげる」
と訳す方が本当は自然なわけです。
つまり
おかあさん、
僕はあなたのものだったよね
でも
あなたは僕のものではなかった僕はあなたに焦がれていたのに
あなたは僕を思ってくれなかっただから、さよならを教えてあげる
(だから、さよならと伝えないといけない)
「さよなら」 「さよなら」
と訳したほうが、John の気持ちに近いはずです。
なぜ「教えてあげる」としないのか?
日本語は目的語を取らなくても成立するので、これほど明確に ”got to tell you” と歌っているのに、「you」を省略しようとします。この歌にとって「you」の解釈がすべてのはずなのに!
私は BEATLES 世代ではないのですが、多分に影響を受け、こういった業界にいますので、ことあるごとに参考にします。最初この曲を聴いたとき、John の生い立ちを並列し、よからぬ妄想をしました。ファンや関係者の方からはお叱りを受けるのを覚悟で、当時の私の感想を率直にいうと「ジョン、やっちまったのか」というものでした。
John の家庭は複雑でJohnは叔母さん家族に育てられ、奔放な実母は新しい家庭を持っていたとされます。ただ、Johnと実母との往来は頻繁で、決して悪い関係ではなかったそうです。John が17歳のとき、叔母さんの家からの帰途、実母は交通事故で亡くなります。
John が殺したのかもしれない、私はこの Mother を聴いたとき、不謹慎にもそんな風に考えてしまったのです。とてもグロテスクな歌と解釈していました。
I just got to tell you 「おかあさんに、さよならを教えてあげないとね」
アメリカの発禁扱いも影響を受けやすいティーンに親殺しを誘発させないためのものかもと、勝手に思っていました。
もうひとりの you
ただ、すぐに別の解釈も浮かびました。you は John 自身である。つまり、しっかりと決別を焼き付けようという意思表明という理解です。
これだと、歌全体の流れもしっかりと把握できます。母や父から自分はしっかりと決別できたけれども、多くの子供たちには自分と同じつらい決別を味わってほしくないというメッセージ。
おかあさん、
僕はあなたのものだったよね
でも
あなたは僕のものではなかった僕はあなたに焦がれていたのに
あなたは僕を思ってくれなかっただから、言い聞かせるよ
「(おかあさんに)さよならなんだと」 「(おかあさんに)さよならなんだと」おとうさん、
僕はあなたを一人にしなかった
でもあなたは僕を置いて行ったね
僕にはあなたが必要だったのに
あなたに僕はお荷物だっただから、言い聞かせるよ
「(おとうさんに)さよならなんだと」 「(おとうさんに)さよならなんだと」子供たちに伝えたい
僕のようにならないで
そう
歩けもしないのに走ろうとしないでだから、伝えておくよ
「(僕の生き方には)さよならなんだと」「(僕の生き方には)さよならなんだと」
ああ、ママ 行かないで
ああ、パパ うちに帰って
(どうか子供たちに僕の思いをさせないで)
わたしの狂気じみた妄想ではなく、John はこういった気持ちでこの作品を発表したんだろうと思います。
母の日とか父の日とか、いろんな記念日がありますが、どの記念日もまず子供のことから考える記念日なんだと、John の Mother は教えてくれます。